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紫外線蛍光方式(UVF:Ultraviolet Fluorescence)

目次


測定原理

紫外線蛍光方式(UVF)とは

蛍光(Fluorescence)とは、物質が吸収した紫外線など光のエネルギーを光として再び放出する現象です。分子は光のエネルギーを吸収すると、不安定な高いエネルギー状態(励起状態)になり、光を放出したのちに元のエネルギー状態(基底状態)へ戻ります。

例えば試料ガス中の測定したいガス(測定成分ガス)が二酸化硫黄(SO2)の場合、試料ガスに特定波長の紫外線(190nm-230nm)を照射することで、蛍光が発生します。紫外線を照射されたSO2分子が光を吸収し、一定の割合で励起状態(SO2)となり、これらが基底状態に戻ると、吸収された光の波長よりも長い波長の光を放出します。(式1)

式1:蛍光反応(SO2の場合)

式1:蛍光反応(SO2の場合)

(1)はSO2が紫外線によるエネルギーhv1を吸収して励起状態になり、
(2)は励起状態の分子が基底状態に移る際に光のエネルギーhv2を放出することを示します。

SO2から発生される蛍光(240~420nm)の強度とSO2濃度が比例するため、蛍光の強度を検出し、SO2の濃度を測定します。

この原理は試料ガス中の二酸化硫黄(SO2)の連続濃度測定に使用されます。これ以降は、試料ガス中のSO2をUVFで測定する場合について説明します。

UVFを用いたガス分析計の構造と動作原理

UVFを用いたガス分析計は、測定する容器(蛍光セル)に試料ガスを流し、試料ガス中のSO2と紫外線による蛍光(式1)での光(SO2による発光)を光学フィルターで選択透過させて、光検出器により検出しガス濃度を測定します。(図1)

図1:UVFを用いたガス分析計の基本構造

図1:UVFを用いたガス分析計の基本構造と動作原理

二酸化硫黄(SO2)ガス分析計の構造と動作原理

ここでは大気中のSO2を連続測定するガス分析計を例に、その構造と動作原理について説明します。

分析計の全体構造例を図2に示します。紫外線光源にはキセノンフラッシュランプを使用しています。また精度良くSO2濃度を連続測定するために、キセノンフラッシュランプの光源光量変化の補償用検出器を始めとする測定の誤差要因を低減・除去するさまざまな仕組みが分析計に組み込まれています。

図2:紫外線蛍光ガス分析計の構造と動作原理

図2:紫外線蛍光ガス分析計の構造と動作原理

動作原理は次の通りです。

サンプリングされた試料ガスを蛍光セルに流しながら特定波長の紫外線を照射します。試料ガス中のSO2濃度に応じて、この紫外線の吸収量が変化し、蛍光による光の強度も変化します。発生した蛍光は、蛍光選択用光学フィルタ―で選択された透過光として検出器に入り、光検出器(光電子増倍管)でとらえ信号処理することで、試料ガス中のSO2濃度を連続測定します。

測定に影響を与える要因の低減(図3)

紫外線光源の光量低下や、試料ガス中の特定の芳香族炭化水素などによる蛍光は、UVFでのSO2濃度の測定に影響を与えます。UVFを用いた分析計では、さまざまな機構や機能により、これらの影響要因を低減しています。

図3:UVFによる測定に影響を与える要因の低減

図3:UVFによる測定に影響を与える要因の低減

紫外線光源による影響の低減

測定ガスの濃度が低い場合でも蛍光を十分に発生させるため、紫外線光源として輝度の高いキセノンフラッシュランプを使用します。キセノンフラッシュランプは、いろいろな波長の光を発生するため、そのまま励起光として蛍光セルに入光すると、SO2の蛍光以外の光も検出器に入るため測定値に影響を及ぼします。この影響への対策として、HORIBAは反射型の光学フィルターを複数使用して、励起光に必要な波長の光を選択しています。
また、キセノンフラッシュランプは長期点灯で紫外線の光量が低下するため、光源光量の変化を光源光量補償用の検出器で測定し、その変化分に応じてSO2濃度を補正しています。

 

光検出器への迷光入射の低減

蛍光測定のノイズとなる蛍光セル内の迷光を低減するための光学設計に加え、蛍光セル内壁を特殊コーティングし、励起光の反射も低減しています。これらにより、光検出器への迷光入射を低減しています。また特殊コーティングは蛍光セル内壁へのSO2の吸着を防止しています。

 

その他の成分ガスによる影響の低減

紫外線を吸収して蛍光を発するトルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素は、SO2測定に影響を与えます。この影響を低減するため、蛍光セルに試料ガスが導入される前にこれらの成分ガスを、芳香族炭化水素除去器で除去します。また、SO2の蛍光を選択透過させる光学フィルターを使用して、他のガスによる蛍光の影響を低減しています。

非分散形赤外線吸収方式(NDIR)との比較

HORIBAではSO2を測定する分析計の測定方式として、今回の紫外線蛍光方式もしくは非分散形赤外線吸収方式(NDIR)を使用しています。それぞれの方式の特長を生かし、使用目的や使用環境に応じた最適な分析計を提供しています。ここでは両方式の特長をまとめています。(表1)

非分散形赤外線吸収方式(NDIR)についてはこちらをご参照ください。

表1:紫外線蛍光方式と非分散形赤外線吸収方式の比較(SO2)

本表は弊社製品による比較です

表1:紫外線蛍光方式と非分散形赤外線吸収方式の比較(SO2

主にSO2の測定濃度レンジで使用方式を選定します。大気中のSO2を測定する場合にはUVFの分析計が使用され、排ガス中のSO2を測定する場合はNDIRの分析計が使用されます。


関連製品

紫外線蛍光方式(UVF)の分析計は、大気中の汚染物質の1つである二酸化硫黄(SO2)の連続計測・監視に広く用いられています。また、半導体クリーンルーム内の汚染物質である二酸化硫黄(SO2)を監視するために利用されています。

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