医薬品、製糖、食品分野などの旋光物質の純度試験や品質管理・研究開発において、欠かすことのできない旋光計。 サンプル/セルホルダ温度表示機能やパソコンによる遠隔操作、さらにデータが一目で読み取れる液晶ディスプレイの採用など、HORIBAならではの技術を結集した旋光計の決定版です。
最高応答速度約60°/秒という超高速応答を実現しました。従来機SEPA-300に比べ10倍以上の高速応答です。約80°の旋光度を測定するのに従来機SEPA-300では約20秒かかりましたが、SEPA-500では約5秒で測定が終了します。
従来機SEPA-300では検光子を取付けたウォームホイール、それを回転させるウォームギア、そしてそれを回転させるステッピングモータという構造です。 SEPA-500では検光子をダイレクトに駆動するシンプルな構造となったことで、応答速度の飛躍的な向上と角度精度の向上を同時に実現しました。
従来機SEPA-300に比べ体積が約30%、重量が約37%(約35kgから約13kg)になりました。さらに床面積も50%以下となりました。
光源に長寿命で高輝度のLEDを採用しました。放電管であるナトリウムランプに比べノイズの少ない安定した光源と、半値幅が2.5nmと非常に切れの良い干渉フィルターを組合わせています。従来のタングステンランプに比べて長寿命のため、交換の手間が省け、ランニングコストも低減できます。
従来機SEPA-300では対応していなかったBrix純糖率も表示できるようになりました。国際糖度表示と併せ製糖業界からの旋光計への要望を網羅しています。
自動旋光計
最高応答速度が約60°/秒であり、旋光度60°の試料が約1秒で測定できるということではありません。
新幹線でも最高速度300kmと謳っていますが東京-大阪間を2時間以内で移動することはできません。
これは出発時と到着時でスロースタート、スローストップが必要なためです。
旋光計も同様でスロースタート、スローストップの時間が必要です。
この時間を考慮しても従来機に比べ非常に高速で測定できる装置となっています。
旋光度80°が約5秒で測定が完了するのに対して、従来機(SEPA-300)では約20秒かかっていました。
SEPA-500では波長は589nmに固定しているため、変更することはできません。
光路長100mmの標準セルは約12mLです。 同型セルで10mmのセルでは約1.2mLとなります。 最少試料量は光路長10mmで0.1mLのものがあります。 オプションで容量0.1~30mLまで用途に応じた豊富なセルを用意しています。 |
SEPA-500の中空モータの分解能は0.00045°です。
これを移動平均して演算しており、旋光度の表示分解能を0.0001°としています。
なお、旋光度データは0.1秒に1回読み取っており、Responseが0.5秒の最も高速応答の場合で5回の移動平均を行って旋光度表示を行っています。
現在市販されている自動旋光計は全て、±90°未満の測定範囲となっています。※
旋光度が90°未満(図では例として+45°)の時は問題ないのですが、90°を超える(図では例として+100°)と、図の場合ではあたかも-80°と同じ偏光面になります。
このため、測定される旋光度は-80°となってしまいます。
すなわち+100°と-80°では旋光計は区別がつきません。このため測定可能な旋光度は±90°未満としています。
ただし、旋光度が時間とともに徐々に変化する変旋光という現象があります。
この場合、当初の旋光度が90°未満でその後徐々に大きくなって90°を超えた場合は測定ができます。この場合、表示の関係で最大±99.9999°となっています。
これを超えると表示が‐‐‐‐となりエラー表示となります。
※2021年当社調べ
図のように、中空モータはモータの回転中心が空洞になっておりそこを光が透過することができます。
このため従来の構造に比べ部品点数の減少と併せ、SEPA-500は非常にシンプルな構造になっています。
また従来はモータ、ウォームギア、ウオームホイール各々の回転精度が旋光度の精度に影響を与えますのでこの3点の部品の精度管理が非常に重要な要素でした。
今回中空モータ1点のみが旋光度の精度に影響をあたえますのでこのモータの精度のみ厳格に管理すれば良いことになります。
SEPA-500 | SEPA-300 |
オプションで準備しています。 |
標準でUSBメモリーを準備しました。
測定項目(旋光度、比旋光度、濃度、国際糖度、Brix純糖率)はもちろん、測定条件、測定日時、試料名等がワンタッチで保存できます。
旋光度が温度の影響を受けることは、溶液が温度により体積が変化することからも理解いただけると思います。
基本的に温度が高ければ液体は膨張するため測定セルの光路長が変わらなければ旋光度は小さくなり、逆に低温になれば旋光度は大きくなります。
このため旋光計には温度計測が出来るようになっており、旋光度を測定した時の温度が分かれば20℃の比旋光度や濃度等が演算出来るようになっています。
計算式は次の式を用いています。
[α]20λ=[α]tλ×(1+n(t-20))
n:温度補正係数(Temperature Coefficient)
ここで[α]tλはt℃で測定した時の比旋光度、[α]20λは20℃に換算した時の比旋光度です。
因みにサッカロースの場合のnは0.00037とされています。
すなわち温度が1℃変化すると旋光度は0.037%変化することになります。
夏場と冬場では室温が10℃程度変動することがあると思いますが、10℃室温が変化し、旋光計のセル内の温度も10℃変化した場合は約0.37%旋光度が変化することになります。
セルホルダーの温度コントロールが必要になります。
国際糖度とは旋光度から換算した目盛で単位は(°Z:昔は°Sでしたが°Zに変わっています。)で表されます。
砂糖業界ではこの単位を用いている場合が多くあるようです。
26g/100mlのサッカロース(ショ糖、砂糖)を旋光計で測定(20℃で)しその時の国際糖度を100°Zと決めています。
一方Brixというのは溶液中の固形物濃度(重量%、wt%)を表します。
単位は%ですが、Brixが幾ら、という風に%は言わない場合が多いようです。主に手軽に手に入る屈折計で測定されています。
しかし屈折計で測定されたBrixはサッカロース以外の不純物による屈折率も一緒に計測されてしまいますので、サッカロースのみの濃度を計測しているのではありません。
このため一般的に屈折計で測定されたBrixの値は、旋光計で測定されたBrixより大きな値を示します。
そこでサッカロースの純度を明確にするためBrix純糖率という表記が登場します。
Brix純糖率=(旋光計によるBrix/屈折計によるBrix)×100(%) となります。
なおSEPA-500では測定した旋光度によるBrix値は表示していません。
屈折計は簡易タイプであれば旋光計に比べ2桁程安く手に入ります。
そのため果物などの甘さ表示の簡易測定に使用されています。
国際糖度とBrixの関係で記載したように、屈折計によるBrix値は甘み成分であるショ糖のみの濃度を表すのではなく、他の糖類や不純物を含めた固形物全体の濃度を計測しています。
しかし、Brix値が高いと概ね甘さも強くなることが経験上分かっており、屈折計によるBrix値を甘みの指針にしています。
ただ、20,30年程前になりますが、砂糖原料(さとうきび、さとう大根等)の取引にこの屈折計によるBrix値を用いていた時代がありました。
この時生産者が固形物が多くなれば高く買い取ってくれることに目をつけ、ショ糖以外のもので固形物の量を増やす栽培を行ったためBrix値とショ糖の含有量が著しくずれ出したことがありました。
これを機に、取引の見直しが行われ、屈折計以外でのショ糖濃度決定方法に移行していったものと思われます。
蛇足ですが、簡易的には屈折計でのBrix値を甘みの指標としてスーパーなどでスイカなどに利用されていると思います。
糖度11とか12.5などと表示されています。これは屈折計によるBrix値で11とか12.5に対応しています。
糖度表示が12以上になると甘く感じると思います。
果物を購入される際の参考にしてください。
砂糖原料を農家から買い取る際にショ糖含有量を計測するのに使用されています。
次の工程は、原料からショ糖を分離精製することになりますが、何工程かに分けて分離精製していきます。
この各工程でショ糖濃度を計測するのに旋光計が使用されています。
最初の工程である原料(さとうきび、さとう大根等)を搾った直後の液を旋光計で測定することになりますが、この時点での搾汁液は、リンゴのスリ汁が直ぐに酸化して茶色くなるのと同じように直ぐに茶色く着色してきます。
着色が旋光度の値に変化は与えませんが、測定光が吸収されたり散乱したりして検出器への入射光が減少します。
このためノイズが多くなって旋光度の表示にバラツキが出てきます。
SEPA-500では検出信号処理回路にオートゲイン機能を搭載し、また信号の積算時間を任意に選択できるため、検出器への入射光量が10%程度まで低下する場合でも安定な測定ができます。
日本の医薬品の性状および品質を定めた公的規格基準書として日本薬局方があります。
この日本薬局方は、薬事法に基づき製造販売の承認を要しないもの(すなわち、既に性状等が既知で一般に広く利用されだしている試薬)に関しての各種情報が詳細に網羅されている規格基準書です。
そのため、これらの試薬の製造販売に関しては、各種性状を明記するよう義務付けています。
この中に一部の試薬に関して比旋光度の表示が義務づけられています。
製糖業等、食品メーカでも旋光計を多く使用されています。
まず砂糖の原料取引に用いられています。そして国際糖度という単位を設定して国際基準を設けており、取引の基準にしています。
さとうきびや甜菜を原料にしているため、国内農家(主に北海道と沖縄)から原料を購入しますが、その際、原料の砂糖濃度(サッカロースorショ糖濃度)を計測して購入価格を決定しています。
原料を粗糖、精製糖と精製していく各過程でも砂糖濃度を測定していますので非常に多くの旋光計を使用しています。
その他の食品業界においても、甘み添加や各種糖類の濃度管理などにも利用されているものと考えられます。
現在は対応していません。ご要望内容により対応可否を都度検討させていただきます。
日本薬局方に記載されている旋光度測定のセル長は基本的には100mmとなっています。
すなわち国内指針では100mmセルが標準になっています。
200mmセルは一部国際糖度およびUSP、EPでの国際取引に指定されていますが、現在では100mmセル対応で問題ないと思います。
なお上記USP(United States Pharmacpoeia)は米国薬局方、EP(European Pharmacpoeia)は欧州薬局方の略称です。
日本薬局方はJP(Japanese Pharmacpoeia)と略されています。