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細菌感染時のCRPとWBC

CRPとは?

なぜ、細菌感染では、CRPが上昇するのか?

CRP(C反応性蛋白)は肺炎球菌のC多糖体と沈降反応を示す血漿蛋白として発見されました。 CRPはCa2+の存在下で、肺炎球菌表面のリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合します。肺炎球菌以外にも、細胞質膜や毒素の構成成分としてホスホリルコリンを含んでいる細菌は多く、これらにCRPが結合・凝集することによって補体が活性化され、食細胞による細菌貪食や菌体自身の溶菌が生じることにより、生体防衛に役立っています。

Clinical lmmuno-Review 41号 253-260,1984より改変

CRPの人体での役割

シリーズ:CRP-基礎と臨床応用、中西雅樹、稲葉亨、藤田直久、機器・試薬、35(5)、2012

<解説>
CRPは細菌感染に対する生体防御システムとしての役割を持ち、細菌感染時には肝臓でのCRP合成が促進され、血中CRP濃度が上昇します。CRPは細菌の細胞質膜に含まれるリン脂質の一種であるホスホリルコリンに結合することで、補体を活性化し、溶菌反応や貪食反応を引き起こします。一方、ウイルスは細胞質膜や細胞壁の構造を持たないため、ウイルス感染時にはCRP濃度はあまり上昇しません。

CRPとWBCによる感染症の鑑別

ウイルス感染と細菌感染の鑑別

 ●CRP→ ウイルス感染:抗菌薬の適用なし
 ●CRP↑ 細菌感染:抗菌薬の適用あり

細菌感染の発症時期の推定

 ●CRP→ WBC↑ 感染初期
 ●CRP↑ WBC→ 感染後期

重篤な疾患の発見

重症度の評価

<解説>
CRPは細菌感染では上昇しますが、ウイルス感染では細菌感染ほど上昇しません。このことから、細菌感染かウイルス感染かの鑑別に有用です。
また、細菌感染後、WBCがより早期に増加し、CRPはWBCより遅れて上昇することから、CRPとWBCを同時に測定することで、感染の時期を推定することが可能です。
さらに、CRPとWBCの組み合わせにより、インフルエンザなどのウイルス感染に隠れた、重篤な疾患の見落としを防止し、重症度を評価することが可能です。

CRPとWBCを同時測定する効果と意義

鈴江純史、小児実地医療においてCRPとWBCを診療時に即時測定する効果と意義、Readout 19:68 -73,1999

<解説>
細菌感染後、WBCがより早期に増加し、CRPはWBCより遅れて上昇することから、CRPとWBCを同時に測定することで、感染の時期を推定することが可能です。WBCのみ高値であれば感染初期、CRPとWBCが高値であれば極期、CRPのみが高値であれば感染後期と推定することが可能です。

CRPとWBCの産生メカニズム
CRPとWBCの増加の時間差はなぜ生まれるか

参考文献:
血漿蛋白と炎症マーカー、大谷英樹、臨床検査、33・11・1497-1500,1989
血液専門医以外のための血液疾患対応マニュアル 症候編 白血球増加と減少のプラマリケア、武蔵学、治療、
84・2・231- 235、2002

く解説>
細菌感染時には、マクロファージから産生されるIL-6(インターロイキン6)により、肝臓でのCRP合成が促進されます。肝臓でのCRP合成にはある程度の時間を要するために、血中のCRP濃度が上昇するのは約12時間後となります。一方、マクロファージから産生される顆粒球コロニー刺激因子( G-CSF)により、脾臓、肺、肝臓に蓄えられている好中球が血中に動員されることから、感染数時間後には血中のWBCが増加します。G-CSFは骨髄にも働き、好中球の産生を促進します。

監修:
京都府立医科大学 感染制御・検査医学 病院教授
同 附属病院臨床検査部 部長 稲葉亨先生

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