大阪・関西万博が4月13日に開幕します。
HORIBAは、アンドロイドの開発、ロボット工学の第一人者である大阪大学 石黒浩教授がプロデュースするシグネチャーパビリオン「いのちの未来」にブロンズパートナーとして協賛しています。大阪・関西万博(以下、万博)への協賛に伴い、2022年7月に万博事業を推進する「はかるの未来万博プロジェクト」※1を社内に立ち上げ、パビリオンの展示・演出の共創に取り組んできました。HORIBAの取り組みと万博へのおもいを「はかるの未来万博プロジェクト」のメンバーに語ってもらいました。
上岡:パビリオン「いのちの未来」は、過去から未来に向けて脈々とつながる「いのちの象徴」である水に建物全体が覆われており、建物周りも水景に囲まれています。パビリオン自体が生命体として、周囲の環境変化を敏感に感じ取り、「光」に変えて、多様に「いのち」が拡がる様を表現します。この光の演出にHORIBAの「はかる」技術が使われています。
上岡:早い段階で、パビリオン「いのちの未来」の建築コンセプト「渚~Edge of Water~」が決まっていたので、「水」はパビリオンの象徴として外せない要素でした。また、「光」を使うということも決まっていて、この2つの要素を使うことが前提としてありました。
それらを踏まえて、具体的に私たちがパビリオンに何を提供できるかをいろいろとリストアップをして、HORIBAの技術とパビリオンのコンセプトをどのように合わせていくか社内で議論を重ねました。
そうしたなかで、「人の動きを大気の変動でとらえられないか」という発想が生れました。そこから、パビリオン外観の水景の水質の変動も利用して、大気と水、2つの環境の変化を「光」につなげるというアイディアにたどり着きました。
このアイディアは石黒先生が表現されようとする「生きているパビリオン」というテーマにも沿うものとなりました。
ただ、私たちがパビリオンで表現しようとしているのは50年先の未来のことになりますが、実際に納めるのは現時点で実現できる製品です。この時間軸のギャップをつなぐコンセプトが必要で、その議論に一番苦労しました。そうして生まれたのが、HORIBA独自のコンセプト「進化の渚」です。
羽田:「渚」は海の岸辺と陸の境界線を指すものとして言語化できますが、抽象的でイメージがしにくいため、パビリオン「いのちの未来」で何を伝えたいのか、「渚」ってなんだろう、ということをプロジェクトメンバーで何度も意見交換をしました。
私たちは「渚」をいのちの境界があいまいな場所と捉え、はかりえない領域と仮定しました。そして、その領域をHORIBAの計測機器を使って「はかる」ことにより、あいまいに存在する「渚」の解明につなげられないか、というストーリーを描くことにしました。
上岡:「渚」が土、水、空気が混ざり合う場所と捉えることができます。「いのち」の境界はあいまいなもの、いろんなものがぶつかって多様性が育まれるところから「いのち」が拡がるとの考えがあります。私たちは「渚」を、多様性を生む場所として捉え、HORIBA独自のコンセプト「進化の渚」へと肉付けをしていきました。
羽田:HORIBAはビジョン「おもしろおかしくをあらゆる生命へ‐Joy and Fun for All」を掲げ、あらゆる生命がそれぞれのいのちを輝かせる世界、より良い未来の実現をめざして事業活動を行っています。
私たちは、分析・計測技術の力が、豊かな未来社会の創造に貢献すると信じています。
「はかる」ことにより、これまでわからなかったことが「わかる」ようになります。「はかる」ことは、社会課題の解決につながる新たな「知」の発見につながります。
本来はかりえないあいまいな領域を「はかる」ことへの挑戦と技術の探究が、あらゆる生命がいのちを輝かせる世界の実現につながっていくと考えています。
「進化の渚」は、HORIBAが掲げるビジョン「おもしろおかしくをあらゆる生命へ‐Joy and Fun for All」 とパビリオンのコンセプト「いのちの拡がり」とのシナジーを高めるコンセプトとなって、私たちが伝えたいメッセージと「光」の演出をつなげています。
上岡:ITの力でいつでも世界の人とつながれる時代なのに、なぜ今、万博なのか。どこでも誰とでもつながれるけれども、一緒につながるテーマがないとつながれませんし、そういうきっかけは、そうぽんぽんとは生まれないだろうと思います。万博という場をつくって新しいものを発信すれば、人を惹きつけてくれます。万博はそういう活力を生みだす場として、変わりながらあり続けている。そうした活力が生み出される場に自分が関われるということをとてもおもしろいと感じています。人が触発されて何かが生まれるきっかけに万博はなると考えています。
羽田:プロジェクトメンバーだけでは答え・アイディアが出にくい場面がたくさんありました。そういう時に、パビリオンに関わるいろんな人やアイディアに触れて、それらが混ざり合って、パビリオン「いのちの未来」としていいものが出来上がっていきました。人がつながることで、何かを生み出します。万博はそういう場の一つだと思います。
上岡:私自身、プロジェクトへの参加が未来社会を想像するきっかけになりました。
石黒先生も「想像しないものは創れない。未来を想像することが実際作っていくことにつながる。」とおっしゃっています。プロジェクトでの活動を通して、本当にその通りだと思いました。万博がそういうことを語るきっかけの場になれば良いと思いますし、みんなで未来に向かって、ワクワクするものを万博での体験を通して創っていけたら素敵ですね。
上岡・羽田: HORIBAの「はかる」技術を使ったパビリオン「いのちの未来」の光の演出。ぜひ万博会場に足を運んでいただいて、楽しんでもらえたら嬉しいです
(インタビュー実施日:2025年3月)
※掲載内容および文中記載の組織、所属、役職などの名称はすべてインタビュー実施時点のものになります。
※1)はかるの未来万博プロジェクト
公募によってHORIBAグループの国内4社(堀場製作所、堀場エステック、堀場アドバンスドテクノ、堀場テクノサービス)から横断的に組織。年齢や社歴は関係なく、万博に関わりたい、というおもいを持った有志27名のメンバーで構成。
2022年7月にプロジェクトチームが立ち上がり、50年後の未来社会を創造することから活動が始まりました。協賛他社との共創Meetingでは、2075年の「都市環境」について議論を重ね、未来社会の中でHORIBAがどのような存在になっているかを考えました。
[写真右]
上岡 真子
(株)堀場製作所 ディストリビューション & DX本部 ビジネスプロセス改革部 Global Business Supportチーム
2005年入社。はかるの未来万博プロジェクトではプランナーとして、パビリオン「いのちの未来」との調整役を担う。横断的に組織されたプロジェクト全体をリード。
[写真左]
羽田 有沙
(株)堀場エステック 営業本部 営業推進部 マーケティングコミュニケーションチーム
2022年入社。はかるの未来万博プロジェクトではコンセプト・広報係として活動。主にパビリオン「いのちの未来」とHORIBAをつなぐコンセプトづくりをリード。