蛍光分光法は、その蛍光特性に基づいて分子からの蛍光を分析します。蛍光は、分子を励起する光子によって引き起こされる一種の発光です。蛍光分光法は、特定の化合物の分子内の電子を励起する光を使用し、それらを発光させます。 その光はフィルターまたは検出器に向けられ、分子または分子の変化を測定および識別します。
フォトルミネッセンスは、光エネルギーつまり光子が発光を促す現象です。
化学発光(ケミカルルミネッセンス)は、化学エネルギーが発光を促すことと定義され、これには、蛍や多様な海洋生物に見られる生物発光が含まれます。
電界発光(エレクトロルミネッセンス)は、一部の照明用途のように、電気エネルギーまたは強い電界が発光を促すことをいいます。
蛍光は、厳密にいえば、光が電子を励起状態に引き上げるフォトルミネッセンスの一種です。励起状態では振動によって急激に熱エネルギーが周囲に奪われ、その後、1つの光子が最低一重項励起状態から放射されます。この光子放射プロセスに対して、光子を放射しないエネルギー移動や熱損失を含むその他のプロセスを無輻射プロセスといいます。
「蛍光」という言葉を含む測定方法は、前記のどのカテゴリーの発光でもとらえることができます。
蛍光スペクトルは、一定の光源で励起された分子が蛍光を発光する際に放射された光子の数、つまり光の強度を波長の関数として検出したものです。この蛍光スペクトルには、発光スペクトルと励起スペクトルがあります。発光スペクトルは、強度vs.発光波長のプロットを得るために励起波長を固定した状態で発光波長を走査したものです。 励起スペクトルは、発光波長を固定した状態で励起波長を走査したものです。この方法では、スペクトルは、観測用に選ばれた単一発光波長で発光するために試料が吸収する光の波長に関する情報を与えます。これは吸収スペクトルに類似していますが、検出感度と分子識別力の観点でははるかに優れた技法です。励起スペクトルは、溶液または試料内の全ての吸光種を測定する吸収スペクトルとは対照的に、単一発光波長/種に特異的です。1つの蛍光体の発光スペクトルと励起スペクトルは、互いに鏡像の関係になっています。一般的に、発光スペクトルは励起スペクトルや吸収スペクトルよりも長い波長(低エネルギー)側で発生します。 試料がどのように変化しているかを見るために、これら2つのスペクトル(発光スペクトルと励起スペクトル)を使用します。スペクトル強度やピーク波長は、温度、濃度、または周囲にある他の分子(消光分子やエネルギー移動先となる分子など)との相互作用などの要因によって変化します。一部の蛍光体は、pH、電気極性、および特定のイオン濃度のような溶媒環境の特性にも敏感です。
図1:励起スペクトル(青色)と発光スペクトル(紫色)は互いに鏡像の関係になっています。
蛍光分子や蛍光物質は、形もサイズも様々です。クロロフィルやアミノ酸残基のトリプトファン(Trp)、フェニルアラニン(Phe)およびチロシン(Tyr)などは蛍光性があります。また蛍光性のある有機色素や標識として特別に合成された分子を付加した非蛍光性物質もあり、これらの物質の情報は開示されています。一般的に、有機蛍光分子は、内部に芳香環とπ共役電子を含んでいます。有機色素は、そのサイズと構造に応じて、紫外線から近赤外線までを放射することができます。 ここに、紫外線と可視光範囲に及ぶ一般的な蛍光体からランダムに選んだものを示します。一部の希土類元素またはランタニドでは、高い電子軌道が満たされていて、金属配位子の電荷移動による電子遷移は4f-5d軌道間、さらには4f-4f軌道間でも起こります(Bunzli, 1989)。いくつかのアミノ酸やクロロフィルおよび天然色素のように、自家蛍光性の分子は多くあります。その他蛍光分光の非常に特殊な用途に向けて、高度に設計され合成されたものもあります。 蛍光分子と蛍光物質のカテゴリーは以下の通りです。
蛍光タンパク質、半導体、蛍光物質および希土類元素など一般的に使用される蛍光試料から共役芳香族(ジエン)を含むポリマーにも一般的に蛍光性があります。当然のことながら、新たな物質が絶えず創り出されています。
図2:紫外線および可視光スペクトルにおよぶ一般的な蛍光体の一部の蛍光スペクトル
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