アンモニア態窒素計「HC-200NH」、検出器「AM-2000」
長期間連続測定で下水処理制御の最適化や省エネ化に貢献
(株)堀場製作所および水質測定専業の子会社(株)堀場アドバンスドテクノは、下水処理場向けのアンモニア態窒素計「HC-200NH」を開発し、2016年4月1日に発売しました。当該製品は、微生物を用いた処理工程(*1)で、アンモニア態窒素濃度を連続測定することで、設備の運転状況の最適化につながり、電力消費量の削減に寄与すると期待されています。既存のアンモニア態窒素計では、電極の耐久性や測定値の不安定さが課題とされており、当社は東京都下水道局と開発・評価に関する共同研究を行い、耐久性や安定性が6ヵ月継続することを実証しました。当社は、水質処理設備の省エネルギー化に寄与することで、持続可能な社会インフラの構築や事業者のコスト削減に貢献します。
微生物を用いた下水処理工程における測定器の課題
微生物の活動を活発化させる空気を送り込む送風機を備える処理工程では、下水処理施設の約4割の電力を消費すると言われています。流入下水の負荷変動や処理水質の状況に合わせて送風量を最適に制御することで、省エネルギー化への取り組みが活発化しています。進捗を計る指標として、連続測定ができる当該製品と同様の電極式アンモニア態窒素計が応用されていますが、微生物や下水汚れによって測定値の安定性や電極の耐久性に悪影響が及び、施設の維持管理が煩雑化することが課題とされてきました。
アンモニア態窒素計「HC-200NH」について
アンモニア態窒素計「HC-200NH」は、下水処理や排水処理などのアンモニア除去プロセス向けに開発した測定器です。微生物を用いて下水を浄化する生物反応槽の内部に設置され、除去対象のアンモニア態窒素を連続測定することで、処理工程の進捗をリアルタイムにモニタリングします。当該製品の開発では、創業来の電極式の水質測定技術を基に、電極の耐久性を高める応答膜の改良(特長1)や測定値の安定性を高める特許技術(特長2)を採用しました。また、東京都下水道局とともに開発・評価に関する共同研究を行い、下水道局施設でも耐久性や安定性が6ヵ月継続することを実証しました。追加の機能として、電極の劣化診断機能や超音波洗浄機能を搭載し、測定器に関わる維持管理の負荷軽減も期待されています。
下水処理における微生物処理プロセスについて
生物反応槽では下水中の有機性汚濁物質を微生物(活性汚泥)によって分解して浄化します。下水に多く含まれるアンモニア態窒素は、活性汚泥中の硝化菌により硝酸態窒素に硝化され、脱窒菌により窒素ガスに分解されます。
東京都下水道局との共同研究について
- 共同研究の内容
- 研究期間: 2015年5月13日~2015年11月30日
- 研究内容: 下水処理場の実試料水を連続的に測定して、性能及び維持管理性を評価
- 成果: (1)連続測定データによる安定性 (2)手分析値との相関性 (3)維持管理性(測定部の耐久性、保守周期、保守方法) (4)初期費用及び維持管理費用の妥当性 の全ての研究目標を達成し、コストパフォーマンスに優れた製品であると評価されました。
アンモニア態窒素計「HC-200NH」の特長
- 特長1: 保護膜付き電極により耐久性を向上
測定部表面の応答膜上に、保護膜を二重化し、微生物による電極の浸食を防ぐ。 - 特長2: 特許技術、電極内部液の最適化など安定性が向上
電極内部液の最適化や応答膜にアンモニウムイオンと選択的に反応する特殊な膜を施すことで測定値の安定性が向上。 - 特長3: 業界初(*2)、超音波洗浄器や劣化診断機能により維持管理の負荷軽減
アンモニア態窒素計で初めて超音波洗浄器や劣化診断機能を搭載。電極を超音波で常に洗浄し、電極の劣化状況も常時監視することで維持管理の負荷が軽減。
開発者コメント
研究室向けのイオン電極を、工業用の連続測定計器に応用することは、私たちにとって大きなチャレンジでした。特に生物反応槽でのフィールド評価では予想もしない現象があり、苦労を重ねてきました。東京都下水道局様の多大な協力をいただきながら、長期間フィールドでの検証を重ねてきたことで、自信を持って市場に送り出すことのできる測定器を開発できたと思います。今後も当社の測定技術を磨き、お客様にソリューションを提供していきます。
主な仕様
寸法・質量 | (表示部)180(W)×155(H)×115(D)mm /約3.5kg (センサー部)φ65×293(L)mm /約2.7 kg |
測定原理 | イオン電極法 |
測定範囲 | 0 - 1000mg/L |
自己診断機能 | 校正エラー、センサー診断エラー、変換器異常 |
用語解説
(*1) 微生物が下水の汚れを分解・除去する。酸素を供給する送風機が多くの電力を要する。
(*2) 2015年 当社調べ