ORP測定の基礎の部分でも記載していますが、ORPとは Oxidation-Reduction Potentialの略で、「酸化還元電位」と称されています。ORPは、試料水の酸化性物質と還元性物質の化学平衡により定まります。
たとえば、酸化性物質をOxn+、還元性物質をRed、やりとりされる電子をne-であらわすと、次のように示されます。
一般に、試料水には多種類の酸化性物質と還元性物質が含まれることが多く、ORPのみで特定のイオン種などを同定する指標とはなりませんが、試料水中に支配的な一種類の酸化・還元系が存在する場合は、その酸化性物質および還元性物質の存在比を知る手がかりとなります。
このORP測定を応用している例としては、排水中の有機物の存在を測る指標の一つとして化学的酸素要求量COD(Chemical Oxgen Demand)があります。
これは、排水中の有機物を化学的に酸化するのに必要な酸化剤(一般に過マンガン酸カリウムKMnO4)の量を持って、排水の有機物汚濁の程度を示す指標としています。KMnO4溶液を用いて一定量の排水を滴定することを原理としており、その滴定の終点検知にはKMnO4による微着色、あるいはORPが用いられます。元々排水が着色していたり濁っている(懸濁)しているケースも多く、このような場合は、特にORP測定が終点検知の有力な手段となります(「電位差滴定」と称す)。
たとえば、有機物のシュウ酸(COOH)2を硫酸酸性下で過マンガン酸カリウムを用いて滴定すると、次のような反応が起こります。
すなわち、有機物のシュウ酸が過マンガン酸カリウムによって酸化され、二酸化炭素(炭酸ガス)と水に分解されます。この時の過マンガン酸カリウムの必要量がCODに相当し、滴定の終点ではORPの急変が起こります。
ORPを測定するときは、pH計をmⅤレンジに切替え、G端子に金属電極(白金、金などの貴金属電極、特に白金が用いられることが多い様です。)を、R端子に比較電極を接続します。ORPも前述の酸化還元電位を示す式から明らかな様に、温度(T)により変化しますので測定時の温度を一定に(例えば25℃)することが大切です。
なお、ORP計として正しく作動しているかどうかを確認するORP既知の溶液を作成するため、当社ではキンヒドロン電極の原理を応用したORP標準液用粉末を販売しております。これはキンヒドロン(キノン-ハイドロキノン系)の電位がpHによって定まることを利用しています。この粉末を指定容量の純水(イオン交換水)に溶解した溶液において、前述の金属電極と比較電極を接続したmⅤ計(pH計をmⅤレンジに切替えたもの)が規定範囲内のORP指示値を示すことを確認します。
ORP標準液用粉末
型番160-51(中性リン酸塩+キンヒドロン;定容量250ml),ORP 89±15mⅤ
型番160-22(フタル酸塩+キンヒドロン;定容量250ml),ORP 258±15mⅤ
いずれもvs.Ag/AgCl at 25℃
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